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プレゼントは「赤ちゃんとのさよなら」

線がくっきり二本出た!
待ち望んでいた。ドキドキしながら産婦人科に行ったら、先生が「おめでとうございます」と言った。
次の検診では心拍がちっちゃいけど動いていた♡
こんなにちっちゃい命が、こんなに頑張って生きている!
「赤ちゃん大きくなったかな〜?」「今爪くらい?」「苺くらいはまだ?」「卵くらいは?」「早く一緒に遊びたいな〜♡」
嬉しそうに話す娘を横目に運転するパパ。今日は検診日。
みんな一緒に診察室に入る。お腹の中がモニターに映し出される。その直後、頭が真っ白になった。

「赤ちゃんの心拍が確認できません。」

え?

なに?どういうこと?

「受精卵に細胞分裂の過程で何らかの障害があり、お腹の中でお亡くなりになったようです。」
「これは、受精した時点で運命が決まってしまうもので、お母さん自身に原因があるのでは全くありません。」
「10受精卵があれば3つは起こる、全く珍しくないことです。」
稽留流産(けいりゅうりゅうざん)だった。
となりで小さいお姉ちゃんが、言った。
「ねぇママ、赤ちゃん大きくなってるってー♡?」
診察室を出た。
涙がとまらなかった。
あの、一生懸命生きていた命を、確かに生きていた命を、母親のわたしが守れなかった。
わたしのお腹の中で亡くなった。
わたしはわたしが許せなかった。
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。

毎日毎日、朝も昼も夜も、

泣いても、泣いても、泣いても、

不思議なくらい涙はなくならなかった。

誰に何を言われても、悲しさはますます大きくなるだけだった。
だって、赤ちゃんは、わたしの中で…。
娘の寝顔を見ながら、毎日毎日泣いた。
ここにいる。お腹に、いる。
亡くなった赤ちゃんがここにいる。
このときを大切にしよう。
今しかないこの子と一緒のこの世界を、母親として精一杯感じよう。
そう思えば思うほど、涙がとまらなかった。
手術して、赤ちゃんとさよならする日が決まった。
もう、クリスマスだった。
人生で最悪のプレゼントだ。
そう思った瞬間、違う!と思った。
最悪なわけない。
この子が生きた人生が、最悪なわけない。
わたしのところに来てくれたことが、最悪なわけない。
最悪なわけない。

わたしたちは、それはとてもとても幸せな時間を、最高なときをもらっていた。

この子がわたしのところに来た意味。

わたしたちに何を伝えたかったんだろう。

この子は何を残したかったんだろう。

きっと、意味がある気がしてならなかった。

手術は全身麻酔だった。

悲しさと不安で、ググりまくった。

わたしと同じ、稽留流産の手術をした人のブログが、診断1日目〜手術当日、手術後と続いていた。

それを読みながら、また毎日枕を濡らしていた。

 

手術前夜、娘にもきちんとお別れをするように言った。

パパもお腹を撫でてくれた。

「明日は、赤ちゃんがお空に行く日だよ。またいつか、きっとママのお腹に来てくれるからね。ちゃんとさよならとありがとうしようね。」

手術が終わった。

わたしは抱えられてベッドに寝かせられた感覚があった。

視界も、頭も意識が半分くらいで、ぼーっとしていた。

“あれ、わたしは何をしていたんだっけ…”

と思うより先に、涙が出ていた。

ぼんやりした視界の先に、娘とパパの顔が見えた。

「赤ちゃんと、バイバイしてきたよ。赤ちゃん、お空に行ったよ。お空、見てみて。」

わたしは娘にそう言いながら、涙が止まらなかった。

ぼーっとしているのが分かったのか、

「大丈夫やから、もう少し寝とられ。」

とパパが言った。

ひとりになるのが怖くて怖くて、わたしは結局ずっと泣きながらしゃべり続けていた。

3人の生活に戻った。

活動となっていたハンドメイド作品の制作は、しばらくしないことにした。

あの時から、あの子がわたしのところに来た意味だけを考えていた。

夜中にたくさんググって、流産や死産を経験している人はかなりいるんだということが分かった。

ただ、みんな言わない。

言えなかった。他の誰でもなく自分の中で赤ちゃんが亡くなったことは、本当に耐えられないことだったから。

もしかしたら、苦しんでるママはたくさんいるのかもしれない。

わたしのように同じ境遇の人のブログを読んで、ただただ一人で泣いているママが、実はたくさんいるのかもしれない。

わたしは、ただそういうママの思いを聞いたり、一緒に共感したり、それならできるかもしれない。

そういうママの様子を見て困ったパパに、今はひたすら泣かせてあげてとアドバイスできるかもしれない。

もしもそういうママのコミュニティがあったら、助け合えるかもしれない。

そうして、あの子のおかげで、わたしは前を向き直した。

 

ハンドメイドキアリーは、親子みらいコミュニティキアリーになった。


今思い出しても、涙が止まらなくなります。

きっと、今これを読んでいるあなたも、そうかもしれません。


パパはわたしに言いました。

「あの頃、家の中は真っ暗だった。ママは太陽だった。」と。

赤ちゃんのために泣くのはとても素敵なこと。

だから、泣いて泣いて泣いてください。

 

泣き尽くしたら、考えられるのかもしれません。

今一番そばで心配してくれてる、守ってくれてる、家族のこと。

家族の笑顔のこと。

お空に行った、赤ちゃんの笑顔のこと。

 

赤ちゃん、ありがとう!

ママは、あなたの分まで、一生懸命生きるよ!

 

そして、あなたのお姉ちゃん、パパ、ママ、祖父母、みんなのいのち、大切に大切に生きるよ!